イラスト:スキージャンプをしているキャラクター
写真:一面に英文字がデザインされたジャケットを白Tシャツの上に羽織った小林陵侑のモノクロ写真

NEWS

TEAM ROYスタッフコラム 【Vol.3】

【復活の連勝】

独立2年目のRoyはワールドカップの序盤、道具とジャンプが「かみあわず」苦しんでいた。しかし、2025年の2月に行われたFISワールドカップ札幌大会で、今シーズン最高位5位だったROYがいきなり2連勝した。もちろん「地元の利」もあっただろうが、連勝はハンパない。

世界中のメディアがROYの「復活」を報じた。

同時に、何が復活の原因かを探りたがっていた。

いわるゆる「Before / After」で、「これ」を修正したから復活した、と説明がつけば、みんな納得がいく。しかし、ROYの答えは端的な言葉で戻ってくる事はない。

本来、いわるゆる「メディア受け」する答えを用意しても良いのかもしれない。ただ彼がそうしないのは、“スキージャンプの奥深さ” を分かってもらいたいのだと私は思っている。

実はかくいう自分も、札幌の直後の白馬合宿に向かう車の中でROYに聞いてみた。

すると「ジャンプなんて、そんなもんすよっ!」と言われてしまった。

一見、味気ない表現だが、長くスキージャンプと関わってきた自分からすると、とても「深く」「納得」がいく表現だった。

【ジャンプの難しさ】

スキージャンプを素人が語るのは非常に難しいが、とにかく繊細なスポーツのようだ。

「心技体」という言葉はよく耳にするが、毎年ルールの変わるスキージャンプはそれに、「道具(ジャンプスーツ、板、ビンディング、ブーツなど)」が関わってくる。

※さらには自然を相手にするため、風などの「運」の要素もあるのだが、その視点は一旦、おいておく・・・。

ワールドカップシーズンは4ヶ月以上に渡り、またジャンプ台によってプロフィールも異なるため、ずっと好調を維持する事は非常に困難だ。

また、毎週、違うジャンプ台を飛ぶため、先週、勝ったとしても、それと全く同じジャンプをすれば勝てる訳でもない。

金曜日に予選、土曜日に試合、日曜日に予選と試合。月曜日に移動。

その移動とやらは、毎週の様に国を跨ぐ。「雪山」であるため、空港からも遠く、荷物も多い疲れる車の移動。

いつ休憩して、いつ練習して、いつ調整する!?って状況だ。

ROYは序盤の不調を修正するため、ジャンプ週間後のポーランドの2試合をスキップし、札幌での調整に充てた。冒頭に書いた「心技体x道具」の調整だ。

それに成功し、直後の5試合で4度のトップ10入り。

その後、札幌に帰って、慣れ親しんだ台で更なる調整を図った上での勝利。言ってみれば、順調に調整が進んだだけとも言える。試行錯誤の上、「かみ合った」のだ。

札幌ワールドカップの後、世界選手権に向けて、ROYは代表チームと離れ、国内合宿での調整を選んだ。調整方法は、非常にROYらしいものだった。

ジャンプトレーニングやシミュレーション、ジムトレーニングといった通常の練習に加え、クロスカントリーやアルペンスキーなども楽しんだ。シーズン中のトレーニングとしては異例だと思う。

※その実施にあたっては、白馬村に全面的なサポートいただきました。丸山村長ほか、合宿に関わっていただいた皆様、ここに感謝の意をお伝えさせてください。

そして迎えた世界選手権は、さて・・・。

私自身も間近でその結果を見たいと思い、ノルウェーに向かう事にした。

【2大会連続の世界選手権表彰台】

今回のノルディック世界選手権スキージャンプはノルウェー代表のスーツ違反があったにせよ、非常にレベルの高い大会であった事に違いはない。

今シーズン代表チームが全員高いレベルを維持し、誰が出ても表彰台争いができるオーストリアチーム。ラージヒルではそのオーストリア勢と地元ノルウェーチームとを抑えて男女ともに金メダルをかっさらったスロベニア。

見ていて非常にワクワクする大会だった。

その中で、ROYは見事、3位銅メダルを獲得した!!!

この事実があまり大きなニュースとして、日本に届いていない事が凄く悔しい。

大谷翔平のオープン戦の2打席連続四球のニュースの方が多いってどういうか苦笑

アルペンスキーなどもそうだが、欧州ではスーパースター級のスキー競技のトップアスリート。日本でのスキージャンプの立ち位置を変えていかなければ未来はないと、ただ与えられた試合で飛んでいるだけではダメだと考え、独立してチャレンジを続ける小林陵侑というアスリート。

だからこそ、自分はこのコラムを書き続けたいと思う。

ページトップ